製造業を営む社長の皆さん、こんにちは。弁理士の佐原雅史です。
製造業を営まれている社長にとって、分割特許出願をどのように使いこなしたらよいのでしょうか? ここでは活用ストーリーを時系列で紹介します。
1月1日:ベルトコンベアとローラーコンベアの開発が完了→特許出願へ
搬送装置の製造販売を営む社長は、新しいベルトコンベアとローラーコンベアを開発しました。この「ベルトコンベア」と「ローラーコンベア」の新しいアイデアについて特許権で独占する方針を決定しました。
2月1日:特許申請⇒最初の特許出願(親特許出願)の記載
特許出願の準備に着手しました。「ベルトコンベア」と「ローラーコンベア」は、両方とも「搬送装置」です。そこで社長は、1件の特許出願で双方のアイデアをまとめて申請することにしました。
特許請求の範囲(権利主張範囲)には「ベルトコンベア」と「ローラーコンベア」を記載し、明細書では、具体的な開発事例として「ベルトコンベア」と「ローラーコンベア」を詳細に記載しました。
<書類:特許請求の範囲>
「ベルトコンベア」と「ローラーコンベア」の発明を記載
<書類:明細書及び図面>
「ベルトコンベア」と「ローラーコンベア」の開発事例を紹介

<原特許出願の申請内容>
2月1日:特許出願と同時に出願審査請求を行う
自動車メーカーに積極的に売り込むためにも、できる限り早い特許権の取得を希望するため、特許出願と同時に出願審査請求を行いました。
6月1日:審査結果には「発明の単一性違反」の判断が…
出願審査請求から3ヶ月後、特許庁から審査結果(拒絶理由通知)が届きました。審査官による審査結果は「発明の単一性違反(特許法第37条)」という判断でした。

<特許庁の審査結果>
「発明の単一性」とは、一つの特許出願で申請できる「発明のグループ(群)」の数は「1つまで」というルールです。今回の審査結果は、「2つ以上の発明のグループ(群)」を権利主張しているため、このままでは特許査定できません、という結果となります。
7月1日:欲張りすぎた社長は「ローラーコンベア」を一旦断念!
『うーーーーん 欲張りすぎてしまったか・・・』社長はやむを得ず、「ローラーコンベア」を特許請求の範囲から削除(断念)しました。これにより「発明の単一性違反」が解消されるため、残った「ベルトコンベア」について審査を続けることができます。

<審査結果に対する対応>
7月1日:「ローラーコンベア」について絶対にあきらめたくない⇒分割出願実施へ
一方、社長は「ローラーコンベア」の特許権の取得を絶対に諦めたくありません。そこで、最初の特許出願が登録(特許権)になる前に、これを利用して分割特許出願を速やかに行い、特許請求の範囲に「ローラーコンベア」の発明を記載して、特許権の取得を狙うことにしました。
<書類:特許請求の範囲>
「ローラーコンベア」の発明を記載
<書類:明細書>
「ベルトコンベア」「ローラーコンベア」の製品化事例を紹介

<分割特許出願の申請内容>
※なぜ「最初の特許出願が登録(特許権)になる前」に分割特許出願しなければならないのかについては以下の記事をご覧ください。
あとは分割特許出願について審査請求を行って審査結果を待つのみです。
さて、社長は「ローラーコンベア」についても審査をクリアして特許権を取得できるでしょうか?
【復習】分割特許出願活用ポイント:最初の特許出願の審査で「発明の単一性違反」と指摘された発明グループ(群)について、分割特許出願で再チャレンジ!
発明のグループ(群)の数は、特許請求の範囲の書き方によっても変わります。特許出願前の事前判断は容易ではありません。もし、特許審査で「発明グループ(群)が2つ以上ある」と判断された場合は、分割特許出願で乗り切りましょう。
分割出願の他の活用事例は以下をご覧ください。
