製造業を営む社長の皆さん、こんにちは。弁理士の佐原雅史です。

今回は半導体製造装置のメーカーの社長の悩みの紹介です。半導体製造装置のユーザーが全世界に広がっているため、半導体製造装置の発明について特許を申請する国の選択が難しいことがあります。

ここでは、特許を申請する国の選び方について紹介します。

発明には「物発明」「方法発明」の2種類あり

予備知識として、発明のカテゴリーについて理解しておく必要があります。この知識がないと、特許を申請する国を正しく選択することができません。

物発明:アイデアに時間的な要素を含まない

半導体製造装置などの生産機械、ネジ・ボルト等の機械部品、タイヤ・家具など各種商品のように、物品(製品・商品・装置)に関する発明は「物発明」のカテゴリです。「物発明」は、そのアイデアに「時間的な要素を含みません」。

方法発明:そのアイデアに時間的な要素を含む

おにぎりを量産する手順(ステップ)、商品を梱包する手順(ステップ)、車の自動運転手順(ステップ)などは「方法発明」のカテゴリです。「方法発明」は、そのアイデアに「時間的な要素(ステップ)を必ず含みます」。

方法発明:「物を生産する方法発明」と「それ以外の方法発明」の2種類

方法発明は、更に、2つに分類できます。おにぎり(物)を量産する手順、半導体(物)を生産する手順、ネジを量産する手順などは「物を生産する方法発明」となります。反対に、車の自動運転手順、動画の配信手順、微生物を殺菌する手順などは、物を生産しませんので「それ以外の方法発明(一般的な方法発明)」となります。

製造業は「物(成果物)発明」と「物を生産する方法発明」のいずれかが多い

製造業を営む会社で生まれる発明は、「生産される物(成果物)の発明」と「物を生産する方法発明」のどちらかであることが一般的です。この2種類のどちらの発明を特許申請するか否かで「特許を申請するべき国」が違ってきます。

物の発明:物を販売する国で特許申請するべき

例えば、「半導体製造装置(物)の発明」を特許申請する場合、半導体製造装置(物)を輸出・販売する国(使用される国)を選択するべきです。日本で半導体製造装置(物)を製作し、米国の顧客(半導体工場)に輸出する場合、使用国となる米国で特許権を取得することが大切です。

その理由として、米国の顧客(半導体工場)が、全く同じコピー品となる半導体製造装置(物)について、インドの競合企業から購入しようとする場合であっても、米国の特許権で阻止することができるからです(ちなみに、インド→米国のルートを、日本の特許権で阻止することはできません)。

物を生産する方法発明:物を生産する国、または、物の販売国のいずれか(できれば双方)に特許申請するべき

例えば、「半導体の製造手順の発明」を特許申請する場合は、以下の国のいずれかを選択します(できれば双方)。
・半導体の製造手順を用いて半導体を量産する国(半導体生産国)
・半導体の製造手順で量産される半導体が輸出される国(半導体流通国)

この発明を用いて米国で半導体を量産し、その半導体が全世界に販売される場合、生産国である米国で特許権を取得することが効率的です。販売先の全世界で特許権を取得することは、費用負担面で現実的ではありません。

しかし、生産拠点を、米国からカナダに移転した場合、米国の特許権が全く無意味になることにも注意が必要です。その点、量産された半導体が流通する国で特許権を取得しておく利点があります。生産拠点の移転に依存することなく、流通国で特許権を行使できるからです。もし、多くの半導体流通国が存在する場合は、売上の大きい国から優先的に選択しましょう。