製造業を営む社長の皆さん、こんにちは。弁理士の佐原雅史です。

競合メーカーから特許権の侵害に関する警告状が届く場合があります。警告状には、競合メーカーが保有する特許権の特許番号と、あなたの会社の製品名が記載されます。警告により『競合メーカー(相手側)の特許権』VS『自社製品』の争いがスタートします。警告状を受け取った社長の対応実務を紹介します。

初期対応

①回答期限を確認する
警告状には「○日以内に回答ください」と回答期限が記載されます。一般的に、警告状の受領日から5日~30日程度の短い期限が設定されます。回答期限が目前だったとしても『慌てて回答しない』ことが大切です。

②警告状を保管する
警告状及びその封筒(消印日時)、メールであればヘッダー情報を含めてすべてそのまま保管しておきましょう。

③専門家(弁護士や弁理士)に素早く連絡する
社長一人で抱え込むと冷静な判断ができなくなります。専門家(弁護士や弁理士)に即座に警告状を確認してもらうことが大切です。専門家への相談は「社長の気持ちを落ち着かせる」効果もあります。

競合メーカー(相手側)の特許権の現状分析

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で以下の事項を調べます。

①特許権の名義(権利者)確認
特許権の権利者は誰か調べます。権利者本人からの警告状なのか、第三者からの警告状なのか、確認します。

②特許権の残存年数確認
特許権は特許出願日から20年で満了します。消滅している場合もあします。残存期間が2年と10年では、反論戦略が全く異なります。

競合メーカー(相手側)特許権 VS 自社製品の対比を行う

特許権の「特許請求の範囲(クレーム)」と「自社製品の仕様」を細かく対比して、自社製品が本当に侵害しているのか検証します。
具体的には、以下の手順で進めます。

①「特許請求の範囲(クレーム)」は、長文であることが多いので、これを分解(文節)して「構成要件化」します。
②「構成要件」と「自社製品の仕様」を対比して、自社製品の仕様がすべての構成要件を満たしていると「侵害」となります。
 一方、「構成要件」と「自社製品の仕様」を対比して、自社製品の仕様が構成要件を”一つでも”満たしていない場合「非侵害」となります。

競合メーカー(相手側)の特許権を無効できるか検討する

相手側の特許権の特許出願日より前から世の中にあった技術(公知技術)を調査します。調査した結果、特許権の内容に極めて近い公知技術が見つかった場合、当時の審査の新規性・進歩性の判定にミスがあった可能性が有ります。そこで、特許庁へ無効審判を請求して、特許権を無効にすること検討します。
この公知技術は、相手側との交渉にも活用できます。

自社製品を仕様(設計)変更できるか検討する

相手側の特許権を「侵害」している自社製品について、その仕様を変更して「非侵害」にできるか否か検討します。これにより、今後の特許権侵害を予防できます。

自社製品を製造・販売の中止を検討する

相手側の特許権を「侵害」している自社製品の製造・販売を中止する際の影響度を検討します。影響度とは、顧客に与える影響と、自社の経営に与える影響の双方です。

ライセンス交渉の可能性を検討する

侵害の可能性が高い場合、相手側に特許権の実施料(ロイヤルティ)を支払って、自社製品の製造を続ける交渉をします。

なお、警告状への対応は、回答一つでその後の訴訟の成否や賠償額が大きく変わります。上記事項の検討する順番も大切です。社長だけで判断せず、一刻も早く知的財産に強い弁護士や弁理士に相談してください。