製造業を営む社長の皆さん、こんにちは。弁理士の佐原雅史です。

「新規加入」「新規採用」「新規開発」などの”新規”という言葉は、斬新なイメージがありますが、特許の審査ルールの「新規性」の意味は、それとは違います。

製造業を営む社長様が知っておくべき基本知識になりますので、簡単に解説します。

原則:新規性判断の「基準日」は特許出願の「出願日」

特許審査官が発明の「新規性」について審査を行うためには、新規性「あり/なし」を判断するための「基準日」が必要です。この「基準日」は、原則、特許出願の「出願日」に設定されます。

例外:新規性判断の「基準日」は特許出願の「優先日」

しかし、優先権を主張した特許出願の場合、「基準日」は特許出願の「優先日」と「出願日」の2つが設定されます。しかし、話が複雑になるため、優先日の詳細説明はここでは省略します。

新規性判断:基準日前に特許出願のアイデアが「公(おおやけ)」になっていたか否か

特許審査官が審査する「新規性」とは、審査の基準日(原則:特許出願日)よりも前に、その特許出願のアイデアが「公(おおやけ)」になっていたか、それとも「公」になっていなかったか、で判断します。「公」になっていたら「新規性なし」、「公」になっていなかったら「新規性あり」です。

つまり、「新規性」の審査では、アイデア自体の斬新さ・ユニークさを判断する訳ではありません。

特許審査官は、世界中のあらゆる文献を調べる

特許審査官は、新規性の審査のために「基準日(原則:特許出願日)よりも前の日付」がついている世界中の特許文献、論文、ネット情報、製品情報を情報収集し、特許出願のアイデアと同じ内容が掲載(公表)されていないかを調査します。掲載(公表)証拠が見つかった場合は新規性なしということになります。

自分自身の過去の公表文献も、新規性判断の証拠となってしまうので注意

過去に「自分」がアイデアを公表した証拠も、特許審査官は、新規性判断の証拠として採用するので注意が必要です。したがって、自社の過去の販売行為、製品パンフレットの配布、ホームページやSNSへの掲載、プレスリリース、論文発表も、すべて「アイデアが公になっていた証拠」として採用されます。

最近では、特許出願よりも前に、SNSで自分のアイデアを紹介してしまう方が多いので、特に注意してください。

「特許公報」や「特許公開公報」は最も有力な証拠

特許出願の内容や特許権の内容を国民に周知させる「特許公報」や「公開特許公報」は、「アイデアが公になっていたことを証明する文献」となります。日付も明確に付与されているので証拠として採用しやすいからです。

ちなみに、特許庁の「特許公報」や「公開特許公報」があるからこそ、公報発行日よりも遅い日付で、まったく同じ内容を、他人が特許出願したとしても、「新規性」の審査によって、特許権を取得できない仕組みとなっています。

海外の証拠も「新規性」の審査で採用される

日本特許庁の審査では、「海外で公になっていた証拠」と「日本国内で公になっていた証拠」も特に区別しまん。つまり、海外で既に販売している製品アイデア(海外で既に公になっているアイデア)について、これから日本国に特許出願しても、新規性がないため、権利取得できません。

外国の特許庁の審査ルールでも「新規性」は必ず存在

外国の特許審査ルールでも「新規性」は世界共通です。つまり、日本で既に販売されている製品アイデアについて、これから外国に特許出願しても、外国の特許審査官によって「新規性なし」と判断されるため、外国で権利取得できません。

救済:新規性喪失の例外適用(特許法第30条)

日本では「発明者やその関係者が、自分のアイデアを、自ら、公(おおやけ)にしてしまった場合」等に限って救済措置があります。例えば、自分で公にしてしまった日から1年以内に、自白を伴う特例の特許出願を行うことで、上記「新規性」の審査で救済を受けることができます。