製造業を営む社長の皆さんこんにちは。今回は少し法律的な話題にお付き合いください。
特許出願は、審査結果とは無関係に、出願日から1年6ヶ月で特許庁から公開されてしまいます。このルールを社長にお伝えすると「なぜですが?」と問われることが多いです。特許出願を行う出願人にとっては、大切な発明が勝手に公開されることに不都合に感じるようです。
今回は、この理由について簡単に説明します。
国の立場から:最新技術によって社会生活を豊かに
最新の技術(発明)が社会一般に速やかに公開されると、日本(更には世界中)の開発者は、この公開された最新技術を参考にして、もっと優れた技術を開発することができます。
技術開発の好循環によって、困っている人々を助けたり、社会問題を解決したりすることができます。国策としてこのような社会づくりが必要です。
開発者の立場から:最新技術を公開したくありません
しかし、開発者にとっては、最新の技術を開発するまでの道のりには、数多くの失敗、試行錯誤、資金調達などの苦難があります。苦難をクリアして手に入れた成果を「社会一般に速やかに公開する」ことは避けたいことです。
つまり、開発者に「公開しよう」と思いたくなるような「モチベーション(意欲)」が必要です。その仕組として編み出されたのが現在の「特許制度」となります。
両者の立場から:開発者のGIVE(公開)&TAKE(独占)で成り立つ特許制度
特許制度による「開発者へのモチベーション(意欲)」とは、自分が思いついたアイデアを「特許権によって一定期間独占させてあげること」です。
つまり、特許制度は、「(秘密にすることなく)新しい技術を素早く公開した」開発者の社会貢献を尊重し、そのお礼(代償)として、「特許権という独占権を国から付与」する仕組みとなります。
国の立場から:「先願主義」ルールによって素早い特許出願を促進
特許制度は「先願(せんがん)主義」を採用します。「先願主義」とは、同一の発明について最初に特許庁に出願した者のみに特許を与える制度です。発明者は、できる限り素早く特許出願を行う必要があります。この結果、最新技術を、社会一般に速やかに公開することができます。
開発者の立場から:出願から1年6ヶ月の非公開の期間は、開発者を守るため
特許出願後に「すぐに」特許庁から公開することは、開発者の創作努力に対して、あまりにも厳しい対応です。そこで特許庁は、出願日から1年6ヶ月は、出願内容を公開しないための非公開の期間を設けています。本当によく考えられた仕組みですね。
余談:『昔の日本の特許制度』の紹介
昔の日本の特許制度は、特許庁で審査を受けて「特許成立したものだけを公開」していました。この旧制度の場合、どのような発明について特許出願の審査が行われているのか、特許成立前は、誰も知ることができませんでした。
例えば、審査に時間がかかってしまい、出願日から10年に特許権が成立した場合、突然、10年前の古い技術に関する特許権が、10年後に特許庁から初めて公開されます。このような突然発表される特許権によって、第三者が、急きょ設計変更しなければならない事態が起こりました。
このように、潜水艦にように長期間にわたって水中に隠れていて、突然、水面に登場するような特許を、いわゆる「サブマリン特許」と呼びました。これでは安定した企業活動を行うことが難しくなります。


